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常栄寺雪舟庭(国指定史跡名勝)

常栄寺雪舟庭(国指定史跡名勝)

もともとこの地には大内教弘の夫人妙喜寺殿宗岡妙正大姉の菩提寺妙喜寺がありました。毛利氏が防長に移された後、毛利隆元の夫人妙寿大姉の菩提寺となり、寺号を妙寿寺としました。幕末隆元の菩提寺がここに移り、寺号を常栄寺と称するに至りました。

庭園は、今から500年前、妙喜寺の時代に、大内政弘が別荘として、画僧雪舟に築庭させたものと伝えられ、現在国の史跡名勝に指定されています。庭園は本堂の北面にあり、内庭は約30アールの広さで、東、西、北の三方が山林となっています。近年この山林も指定地域に含まれました。

庭に使用されている石材はこの近くの山から運搬したものと言われる輝岩です。庭は北側に滝を掛け、中央には無染池(心字池)を設け、その周囲には庭石を豊かに配しています。石は室町時代の特色となっている立石が多く使用されています。庭の上方に小高い丘陵がありそこに四明池、弁天池の水源があります。弁天池の水は一つは潜竜池に流れ入って洗耳渓から無染池に注ぎ、また一つは坐禅石の脇を通って池に入ります。北側の滝は下部を五渡渓、上部を揚雲渓と称していますが、四明池はその上にあります。この滝は現在水が流れず、枯滝といっていますが、最初は水が流れていたと思われます。滝の石組みは立派でよく室町時代の特色がでています。

池中には四仙島と称される四つの島が浮かんでいます。東池畔には仏石と呼ばれる霊象石と投形石を組み合わせた大石があり、西北側には十六羅漢と名付けられている岩組や、坐禅石と呼ばれる石があります。南方の本堂正面には中央に日本を象徴した富嶽と称する石を置き、前方には終南山、五台山、廬山、華山、衡山、百丈山などと呼ばれる中国大陸の三山五嶽になぞらえた石組みがあります。これは雪舟が中国大陸の風景から得た構想と伝えられています。

この常栄寺庭園は水と石とに主体をおいて、甚だ簡素でありまた豪放です。ことに岩のもつ硬さ、すなわち岩の意志とも言うべき頑丈さをこれほどまで生かした庭園はほかに求めることはできません。明治の中期、日本古美術の再発見と近代日本画の開拓に貢献した米人フェノロサが「雪舟は芸術界全部においての直線と角との最大の巨匠である」といっています。その評は雪舟の山水画に対してのものでしょうが、この雪舟庭においてもよくその言葉を味わうことができます。

(山口市観光情報サイト「西の京やまぐち」より抜粋)